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Interview

井田 浩司(焙煎士):焙煎世界大会を終えて(後編)

2020年01月17日

台湾で行われた焙煎世界大会(WCRC2019)に日本代表として挑まれた井田さん。前回は実際に競技を終えてみて感じたことを語っていただきました。後編では「次」につながるお話を聞かせてもらいます。

後藤直紀

Naoki Goto

「基準」を知る事の大切さ

後藤:大会の振り返りありがとうございました。では次に、今後世界大会に挑む方とか日本の大会に出る方に向けてアドバイスをいただけますか。

 井田:はい。 

後藤:まずは日本大会に出てみようかな、という方に何かアドバイスをください。ずばりチャンピオンになるためには何をしたらよいのでしょうか。

 井田:うーん、色々とありますけど、一番大事なのは「選手に何が求められているか」をきちんと知る事ですね。

後藤:それってどうやって知ったら良いんですか?

 井田:まずはR&R(ルール&レギュレーション)を良く読む。

後藤R&Rの読み込みの重要性はどの競技でも良く言われますね。

 井田:はい。それに加えて、僕の場合は三神さん(毎年日本代表のコーチをされている方)のレポートを読みました。あれは・・・何だったっけ。SCAJのニュースレターでしたっけ?

後藤:ニュースレターですかね。もろに書いてあったやつ?

 井田:はい。日本大会が始まる前に出た会報誌に三神さんが前年の世界大会の同行記を寄稿していて、そこに大会の様子とか、今回どういった味わいのコーヒーが高く評価されていたかとか、評価の傾向の変化なども含めてこと細かに書いてありました。僕はその記事を何度も読んで日本大会の時の味づくりの参考にしました。

後藤:なるほど。日本大会のルールや基準って前年の世界大会に沿って作られているから、その情報を知るか知らないかだけでも差が付きそうですね。

 井田:初めて出る人ってその競技に関してほとんど何も情報がないですよね。蓄積もないし。何度か出ていたらフィードバックから評価の基準や傾向がある程度見えて対策も打てますけど、初めて出るのだったらその辺り全然分からないはず。だからこそ、まずは競技の事を良く調べないと。とくに「どういう味が競技会に求められているか」を知る、そのための努力は絶対に必要かと思います。

後藤:なるほど。ありがとうございます。

 

感性を研ぎ澄ます

 

後藤:では次に「世界大会に挑む人」に対してのアドバイスをいただけますか。未来のご自身に向けての言葉でも大丈夫です。

 井田:振り返りの話に戻りますが、世界大会では「信用できる数値」と「信用できない数値」を切り分けて把握しないといけないですね。あと・・・まだやり方はこれから考えないといけないんですけど「カップを取らなくても焙煎をアジャストできる方法」を見つける。

後藤:あ、それはローカルルール対策ですね。(※ここ最近の世界大会では、本来必要不可欠な「練習で焼いた豆の味チェック」が運営の都合上禁止されている)

あれは正直、ひどい話だとは思いますが・・・まあ、条件は皆一緒だしやるしかないのかな。それでも合わせてきてる選手、というか国はあるし。

 井田:そうなんですよ。文句言っていても仕方がない。だから、今から対策を考えて準備しておかないといけないです。

後藤:今回は感覚的な所よりも情報を信用しすぎたって仰ってましたよね。その辺に関してはどうですか?

 井田:情報ってもちろんすごく重要で、出来る限り集めて準備しておく必要があるんですが、同じくらいその場の感覚も大事で。

世界大会では本当に色々な事が起こるから、何か「おかしい」という事があればその場ですぐにクリアにしないといけないし、まずそのおかしな事に気付く事が出来るように普段から感性を鍛えておかないといけない。

 後藤:なるほど。

 井田:今回、自分の中で準備はほとんど出来ていたと思うんですよ。ただ、、その感覚的な所が、やっぱり、、もっと、研ぎ澄ます、ではないんですけど。「違和感」を持った部分をしっかりこう、修正していく、とか気付いていくとか。その力が自分には足りて無かったんだろうな、と。。。

後藤:他にはありますか?

 井田:あとは、生豆の知識ですかね。グレーディングとかではなくて、もっと総合的な知識。

 

言葉の壁

後藤:世界大会はレポートから何から全部英語で行われますよね。「言葉の壁」みたいなものはありました?

 井田:どうだろう。僕はあまり感じなかったですね。今回特にアジア開催というのもあったのかもしれませんけど。※今回は運営側に日本人が数人入っていた。台湾の人達も簡単な日本語だとわりと通じたりする。

あ、でも、もしチームに通訳を入れるんだったら、ちゃんと「通訳」として登録した方が良いかもしれません。

後藤:井田さんの場合はコーチの三神さんが通訳も兼任されてましたよね。

 井田:はい。今回は何かあった時に三神さんを呼んで聞くことは出来たんですけど、これNGになる可能性もあります。一応コーチと通訳の登録って分かれているので、コーチが入れないタイミングで何かあると、通訳として呼べない状況が生まれるかもしれない。

後藤:たしかにそのリスクはありますね。

通訳兼コーチの三神氏。競技中の「コーチング」は失格となるため、「通訳」としては越えられるこの赤いラインを「コーチ」は越える事ができません。ただ実際のR&Rの運用には幅があり、何をどこまで出来るのかはその時の運営の裁量次第。たいてい緩めだが、厳しい人は本当に厳しく、そんな人に睨まれると何もさせてもらえなくなってしまいます(涙)

後藤:そう考えると、一番いいのは選手自身が英語を話せるという事ですかね。

 井田:そうですね。自分が思ったことをその場でぱっと言えるというのは大きいし、あとは他の選手とか運営の人とコミュニケーションも取れるから、英会話は絶対に出来た方が良いですね。そこは僕ももう少しやっておきたかったな、という所です。

様々な国籍の選手がいますが会話はほぼ全て英語で行われます。どこの国のチャンピオンも皆オープンマインド。積極的にコミュニケーションを取る事で互いに貴重な情報を得ることが出来ます。

 

「これから」のこと

後藤:ありがとうございます。誰かへのアドバイスというか、完全にまた井田さん自身の振り返りになっていますね(笑)。

 井田:たしかに(笑)。

後藤という事は、、「次」がある?

井田:実は、この大会が終わったら焙煎から身を引こうと思っていたんです。

後藤:それは現場を離れて、品質管理とか教育の方へ回るという事ですか?

井田:そうです。でも今回、まだ全然やれてないし、やる事もまだまだある事が分かって・・・。焙煎、、難しいですよね。

後藤:難しいですね。

井田:で、やっぱり焙煎をしたくなってしまいました(笑)。

後藤:ははは。わかります。そんなこんなで、たぶんずっと止められない(笑)。

井田:止められませんね。

後藤:競技も続けます?。

井田:はい。また世界チャンピオンを目指して、日本に帰ったらすぐに準備を始めます。

後藤:あれだけ過酷な競技が終わった、その直後にそれが言えるのが凄い。やっぱり井田さんは強いなぁ。

井田:まだまだです。でも頑張りたいと思います。

後藤:来年の世界大会は今年のチャンピオンの阪田さんが出るので、その次となるとあと2年はありますね。

 井田:その前に日本大会でもう一度勝つ必要がありますが、世界大会までの時間は十分にあるので、それまでにしっかり準備したいと思います。

後藤:頑張ってください。それではインタビューはここまでです。ありがとうございました。

 井田:ありがとうございました。

 

取材を終えて

今回井田さんのチームとホテルが一緒だったのですが、実はこのインタビューの前日、大会が終わったその日の夜に「眠れないので上で飲みませんか?」とお誘いをいただき、そこから朝までずっと話をしていました。

井田さんが世界大会に向けて相当な準備をしてきていたのは知っていたので、悔しくて眠れないんだろうと思っていたのですが、全然逆で、今回具体的に何が足りなかったかとか、何をどのように準備したらもっと良く出来るのか、とか、競技の振り返りをしながらずっと「次」に対する話を、目を輝かせながら語っていました。結果発表からまだ数時間しか経っていないのに、もう次を見据えて前を向いている、その姿勢に驚きました。

 

写真に写っているのは井田さんとコーチの三神さん、応援に来ていたファインタイムコーヒーの近藤さん。白酒片手に朝まで語りつくしました。

 

 2013年の日本大会に私は運営側のお手伝いで参加しており、裏方として選手の方々のそばで競技を見ていました。そこで見たある一人の選手のアグレッシブで挑戦的な焙煎をする姿に「なんかこの人すごい」と驚き「チャンピオンになるべくしてなる人ってこういう人なんだろうな」と、そこに未来の強いチャンピオン像を見ました。

それが井田さんとの初めての出会いです。それから6年経って、本当にチャンピオンになった井田さんを見ても、最初の強い印象は全く変わっておりません。再び世界大会のステージに立つためには、世界一熾烈だと思われる日本の国内競技を勝たないといけません。日本の競争は本当に厳しく、今まで二度優勝した人もいませんが、井田さんならいつかきっとまた勝ちあがり、強い日本代表としてまた世界に挑んでくれると思っています。頑張ってください。応援しております。