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Interview

後藤直紀
求めているコーヒーは、特別な味よりも
日常生活になじむ味

2020年04月10日

 

2013年の「World Coffee Roasting Championship」で優勝、世界トップクラスの焙煎士である後藤直紀さん。福岡県大野城市にある〈豆香洞コーヒー〉のオーナー焙煎士として、日々、焙煎機と対話しながらめざすコーヒーの味とは。

後藤さんは1日のほとんどを焙煎室で過ごす。店頭では販売スタッフがお客さんに好みを伺いながらコーヒー選びをサポートしている。

 

味づくりの理論を突き詰めた先に見えてきたもの

後藤さんが焙煎に興味をひかれたきっかけは?

焙煎をしていて何が面白いかというと、違いが味に如実に出ることでしょうか。料理なら、「おいしい」「おいしくない」といったように、正解がわりと明確にありますが、コーヒーの場合、その境界がとてもあいまい。ちょっとした加減でどんな味にもなってしまうんです。 

違いに面白さを感じることについては、子どもの頃からそうだったのかもしれません。当時、住んでいた家は森のすぐそばにあって、自然を身近に感じて育ったんです。土のにおいって、ありますよね? 晴れた日は乾いた感じのにおいがするけれど、雨が降るとまた違うにおいがしたりする。環境によって左右されてしまうから安定もしないし、複雑さもある。そうした日々の違いを味わうように感じていたんです。

お店は焙煎所のすぐそばに。大野城市白木原の住宅街にあり、コーヒー豆を求めるお客さんがひっきりなしに訪れる。店舗は福岡市内にもある。

〈豆香洞コーヒー〉白木原店|福岡県大野城市白木原3-31/博多リバレインモール店|福岡県福岡市博多区下川端町31

 

それから、小さい頃はなぜかいろいろなものを食べることに興味があって、木の葉っぱをちぎって食べたり、ザリガニをつかまえて食べたりしていて(笑)。同じ木の葉っぱでも、若葉とそうではない葉っぱでは味が違うし、ザリガニも個体差によって味が違うんです。単純に、違うということが面白かったんですよね。

 

コーヒーの味を見極めるときも、その経験が生きているのかもしれませんね。〈豆香洞コーヒー〉の味は、後藤さんが微差を繊細に捉えながら、幾度となく検証をくり返しながら生まれたものです。

温度や時間など、焙煎プロファイルは綿密に数値化していて、ある意味、とてもロジカルに味づくりをしてきました。1日中、焙煎機を操作しながら、ひたすら数値と味とを結び付ける作業をしていて。その数値もどんどん細分化させていって、コンマゼロ以下の数値の差ですら、それが味にどのように影響するかをとことん解明したいと思いながらやってきたんです。

倉庫では生豆を24時間定温管理。生豆は焙煎前に1粒ずつチェックし、クオリティが満たない豆はすべて手作業で取り除いていく。

 

ただ、最近は数値を極めれば極めるほどに、それだけでは追いつけないところがあるのかもしれないと思うようになってきました。「この数字をこうすれば、味はこうなる」といったことが把握できるようになってきましたし、数値だけでやれることはすべてやりつくしてきたところもあって、もっと自分の本能の部分にゆだねてみるというか、感性をみがいていくことも大切なのかもしれないな、と。

 

そうすると、幼少時に大自然のなかでやしなった感覚が、さらに発揮されるのでは?

僕のなかではあの経験を特別なものだったと思ったことはありませんが、振り返ってみると、もしかしたら子どもの頃の感覚は、僕のこれまでのコーヒーの味づくりに深いところで結び付いていたのかもしれません。そうした感覚を研ぎ澄まさなければならないとも思っていませんでしたが、だけど、コーヒーの味を今以上に向上させていくには、そこもやっていかなければならないとは思うようになりました。

例えば、川の流れる音。川辺で水の流れを聞いていると、ざーっという音が遠くから徐々に近づいてきて、自分の前を通り過ぎてすうっと消えていく、独特の余韻がありますよね。そうした余韻の残り方を、コーヒーを飲んだときの余韻にできたら心地良い味になるのかなと思ったりするんです。以前は「自然の景色を眺める時間があったら、数値を眺める時間にあてたい」なんて、すごくストイックにやっていたんですけれど。

 

感性をみがくうえで、後藤さんが影響を受けているものは?

自然もそうですが、人のつくったものはよく見ていますね。特に、器のような、日用品が気になります。コーヒーカップにしても、美術館に展示されるような素晴らしいものもありますが、そればかりを見ていたら、自分が焙煎するコーヒーもなんだかきらびやかな味になってしまいそうで(笑)。僕の場合、日用品のように身近に感じられるコーヒーをつくっているので、日用品に答えがあるのかなと思っています。

 

これまではロジカルに味づくりをしてきたけれど、もっと本能的に味を求めていこうとしているのでしょうか。

例えば、7.5といったコンマゼロ単位で味の違いが分かるようになって、次第に7.527.58といった、7.57.6の間の細かいところも理解できるようになってということを重ねていくと、どんどん数値のグラデーションは細かくなって、最終的には無段階になってしまうんですね。味を安定させて焙煎をしていくには、数値は絶対になくてはならないものです。

だけど、味づくりの最後の、わずかな塩梅のさじ加減を決めるのは、やはり、本能的な感覚なんですよね。そこを鈍らせたくないという思いはあるかもしれません。春先に飲んでもらいたいコーヒーをつくるとして、味を数値に落とし込む際、0.5%か、それとも0.2%にするかといった選択肢ができて最終的にどちらかに決めるとき、頭で考えるのではなく、本能から「こちらのほうが春のうららかな感じが出せているから」と選べたなら、その味にもっと共感してもらえることもあると思うんです。ただ味が良いだけでなく、コーヒーを介して新たなコミュニケーションが生まれる。そういうことができればと思っています。

 

The Roast」があったら、焙煎士は必要なくなる。それでも僕がやる理由

焙煎機はGIESEN(ギーセン)を使用。「ベルギーのロースター、ジェフ・ヴェレレンさんの焙煎所を訪れたときにこの焙煎機を使っていて、僕も同じものにしました。ジェフさんは僕にとってのスーパースターで、焙煎機の色もジェフさんと同じ赤にしたほどです」。

 

2016年から「The Roast」の監修をされていますが、そこに至る経緯は?

The Roast」に関わることは、どうして自分はコーヒーを生業にしているのかを問い直すような、いわば、原点に立ち返るような思いがあります。僕の焙煎士としての原点というのは、家庭で飲むコーヒーをおいしくしたい。この思いだけなんです。それで焙煎所をつくり、質の高いコーヒー豆を仕入れて、豆を焼いて、お客さんに求めてもらえるような味づくりをして……ということをしてきました。なんというか、「ご近所のみなさんのコーヒーの味を僕らが守る」といった感覚がずっとあるんです。

「焙煎機のなかで生豆がどのような状態になっているのか、音を頼りに焙煎具合をイメージしています。ヘッドホンをして焙煎機のインバーターの轟音をシャットアウト。豆の音に集中します」。

 

でも、お客さんにコーヒーをおいしく飲んでもらうには、家庭での焙煎という方法もあるとずっと思っていました。焼き立てだからこそ感じられる香りや味わいがあるからです。ですから、「The Roast」の登場は、本当に革新的だったし、家庭でコーヒーを楽しむうえで究極の道具だと考えています。もしも20年前にこの道具があったら、自分は焙煎士になろうと思わなかったかもしれません。だって、これがあれば、家でおいしいコーヒーを淹れられるわけですから。

The Roast」の存在は肯定しながらも、「The Roast」が家庭に普及したら、焙煎屋は必要なくなってしまうので(笑)、焙煎士としてはもどかしい思いがあるし、葛藤もあるんです。だからこそ、自分の役割は何なのか、これから何をすべきなのか、何ができるのか、あらためて考えなくてはならないと思っているところです。

焙煎室には敬愛するジェフさんからプレゼントしてもらったポスターが。コーヒー器具「AeroPress」による抽出技術を競う「エアロプレスチャンピオンシップ」のもの。過去、この大会で世界チャンピオンとなったジェフさん、佐々木修一さん(パッセージコーヒー オーナー兼バリスタ)のサインが記されている。

 

後藤さんは、味をどのように決めているのですか?

どんな業界でもそうだと思いますが、コーヒーにも流行りすたりがあります。流行に乗っていくのか、それとも「うちの味はこれだ」と、こだわりを持ってやっていくのか、そのあたりはコーヒー屋の生存戦略に関わってくるところですし、正解はないと思っています。〈豆香洞コーヒー〉の場合、家庭で飲むコーヒーをおいしくしたくてやっているので、やはり、お客さんの話を聞くということを最も大切にしています。

The Roast」の焙煎プロファイルは、「自分はこういう味にしたいんだ」という思いでやっていますね。お店でお客さんの声を聞くといったように、誰かと味のすり合わせをしているわけではありませんし、なんというか、はじめて自分が表現者として豆を焼けているという感じもあります。自由度が高いですし、そういった意味では、僕の個性が出ているのかも知れません。The Roastを実際に使っているお客様がどのような味わいを好んでいるのかが、データとして明らかになってきているので、今後の味づくりの参考になりそうです。

店内には喫茶スペースも併設。好みに合った味わいのコーヒーを目の前でハンドドリップしてくれる。博多リバレイン店では、コーヒーの淹れ方を伝えるプチコーヒー教室を開催することもある。

 

味づくりについては、雑誌やメディアばかりを気にしていると、ちょっとずれてしまうような気もしています。スペシャルティコーヒーが好例で、最近、メディアなどでよく取り上げられるようになりましたが、実際に出回っているコーヒーのうちで1割あるかないかくらい。9割はコマーシャルコーヒー(最も多く流通しているコーヒー)が飲まれているんです。

では、なぜ、多くの人がコマーシャルコーヒーを飲んでいるかというと、おいしいと感じているから。焙煎士としては、スペシャルティコーヒーのような良い品質の豆にもっと気軽にチャレンジしてもらって、コーヒーをおいしく飲んでほしいという思いがあります。ただ、「スペシャリティコーヒーだからおいしい」「コマーシャルコーヒーは良くない」ということではなく、人びとからどんな味が求められているのか、自分がもっと視野を広げて、分け隔てなくコーヒーという飲料全体を見渡せるようにならなければいけないとあらためて思っています。

コーヒー豆のほか、ドリップバッグやコーヒーリキッドなども販売。ギフトとしても人気。

 

誰でも気軽にコーヒーの味わいを楽しめるようにと生まれた「珈琲羊羹」。「僕のあんこ好きが高じてつくりました。昔から和菓子が好きで、意外にもコーヒーにもよく合うんですよ」。

 

The Roast」の価値を認めつつも、後藤さんご自身には、プロの焙煎士としての矜持があると思いますが。

一番はやはり、うちのお店に来てくれるお客さんに喜んでもらえる味をつくるということでしょうか。「The Roast」の焙煎プロファイルについても相反するところはなくて、「豆香洞コーヒー」も「The Roast」も、どちらの味づくりにおいても同じ思いで取り組んでいます。どちらも本質の部分にあるのは、おいしいコーヒーを家で飲んでもらいたい。それをいかにして達成していくかというところなんです。 

それから、生豆を最も良い状態にして飲んでもらうために、自分のできることはなんでもやらなくちゃならないと思っています。生産農家さんは大変な苦労をしながら、我々の想像を絶するような手間をかけて大切にコーヒー豆をつくっています。そうしたつくり手の思いが報われるような味づくりをすることも、プロの焙煎士としての責任ではないでしょうか。

僕も本格的に焙煎士をめざす前は、独学で家庭用の焙煎機で自分の好きな味をめざしていたものですが、プロの焙煎士ならば「おいしいコーヒーは、これです」と、自信を持って答えを提示し続けていかなくてはならないと思っています。そして、カップのなかのコーヒーを、最高においしいものにしたいんです。

 

後藤直紀 GOTO Naoki

神奈川県横浜市出身、福岡県福岡市育ち。会社員時代、コーヒーの焙煎を独学で学んだのち、独立開業をめざして東京・南千住にある老舗喫茶店〈バッハ コーヒー〉の田口護氏に師事。焙煎理論・技術を中心に、素材や製品の検証技術、抽出の基礎理論などを学んだのち、2008年、福岡県大野城市に〈豆香洞コーヒー〉を開業。「World Coffee Roasting Championship 2013」優勝、「ジャパンコーヒーロースティングチャレンジ2012」優勝ほか、受賞歴多数。

 

写真:中村紀世志  取材・文:菅原淳子

この記事で紹介されたモノ

豆香洞コーヒー

コーヒーようかんとコーヒー豆のセット(送料込みでお得♪)

4,300円(税込)

ひそかに人気の「珈琲羊羹」と当店人気ナンバー1「豆香洞ブレンド200g」と人気ナンバー2「エチオピアハイレセラシエ200g」のセットです。手わたしで安心な「レターパックプラス」で全国にお届けいたします。

  • 「コーヒー羊羹」 200g
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Panasonic スマート コーヒー焙煎機「The Roast Basicサービス」

110,000円(税込)

The Roast(ザ・ロースト)Basicサービスは、毎月ご自宅に届く生豆、豆に合わせた焙煎工程(プロファイル)、焙煎機本体をセットにプロの焙煎技術を再現。毎月 世界各地から厳選された「スペシャルティコーヒー生豆」および 豆に合わせた唯一無二の「焙煎プロファイル」をお届けする定期頒布サービスです。 焙煎機本体(スターターキット付き)をご購入のうえ、別途GREEN BEANS(生豆)定期頒布のご契約が必要です。

  • 生豆1種コース(200g×1):月々2,160円(税込)
  • 生豆2種コース(200g×2):月々3,672円(税込)
  • 生豆3種コース(200g×3):月々5,184円(税込)

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Panasonic スマート コーヒー焙煎機「The Roast Expertサービス」

250,000円(税込)

「The Roast Expert サービス(ザ・ロースト エキスパート サービス)」は、Expert対応焙煎機とスマートフォンやタブレットにダウンロードした専用アプリを用いる事で、焙煎温度、時間、風量を1℃、1秒、1%単位で設定することができ、自分自身で作成した焙煎プロファイルでこだわりの焙煎を楽しむことができます。コーヒーのプロの現場でも、サンプルローストや味づくりなどで活用されています。

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