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一杯のコーヒーの先に見た未来の自分

2020年05月07日

こんにちは、はじめまして。編集者の水島七恵と言います。毎月一度、こちらでコラムを綴らせていただくことになりました。コーヒーと、その周辺で生まれた至極個人的なエピソードを綴ることができたらな、と思います。どうぞよろしくお願いします。

苦味においしさが宿るなんて、まるで人生のようで。たくさんは飲めないけれど、いつしか1日のなかでカップ一杯のコーヒーが与えてくれる時間が欠かせなくなっていました。主に私の場合、それまでの思考や空気の流れを一度断ち切りたいときに飲むことが多く、なかでも今最も飲んでいるコーヒーと言えば、自宅近くの喫茶店で飲むウィンナーコーヒーだと思います。

つかず離れずの間合いが最高に心地よいマスターが淹れてくれたウィンナーコーヒーの、生クリームの甘味とコーヒーの苦味が舌を滑らせていくとき、それまで過ごしていた時間軸が変容し、どこか荒くなっていた呼吸が整っていくような感覚になります。

そんなコーヒーの、その周辺のエピソードと言えば、コラム初回ということで自己紹介がてら、私がこの編集者という仕事に就くきっかけとなったフリーペーパーをご紹介させてください。

約20年前、当時まだ大学生だった私は、音楽が大好きで将来はレコード会社で働きたいと思っていました。とはいえ、学のない私には狭き門になるだろうことは想像に硬くなく、ボランティアでも良いから今すぐどこかで働くことはできないかネットを通じてアクションをした結果、レコード会社、東芝EMI(現ユニバーサル・ミュージックUMJ)にてインターンとして働くこととなり、EMI所属のアーティストの新譜やインタビュー記事を載せるフリーペーパー<VD mag>(写真)の制作に携わることになりました。

何がダメな文章で、何が良い文章かも判断つかない当時の私は、「無知」という名の武器を携えて、プロのミュージシャンに向かっていったわけですが、文章を書いて編集するだけでなく、<VD mag>を配布する場所の開拓もまた、私の仕事でした。

当時、時代はカフェブーム真っ只中。古いマンションの一室に、デザイナーズチェアと心地良い照明。こだわりの音楽と、もちろんおいしいコーヒー。<VD mag>とは都内を中心とした素敵なカフェに配布していくことをミッションとしていたのです。

どっさり袋に詰まった<VD mag>を片手にカフェを巡り、直接お店の方と配布交渉をする日々。まだ学生の身であった私にはそれはなかなかハードな日々でしたが、休憩がてらそこで飲む一杯のコーヒーが、私に安らぎと同時に未来への期待感を与えてくれました。私にとって<VD mag>とは、社会人として一歩踏み出すための予行練習であり、同時に本番でもあったからです。

痺れる表現者たちに寄り添いながら、自分の実感に基づいた文章を書く。<VD mag>の制作を通じて、いつしか私は音楽の仕事に就きたいというこだわりは消えてゆき、代わりに文章を書くことも含めた編集者になりたいと思うようになっていきました。その思いを育んだ場所のひとつが当時巡ったカフェであり、そのカフェ空間で飲む一杯のコーヒーが、私の思考をそっと導いてくれたような気がするのです。

 

水島七恵 Nanae Mizushima

編集者 / 新潟生まれ。主に文化・芸術を思考領域としながら、企画とディレクション、執筆などを行う。連載としては、雑誌『リンネル』(毎月20日発売)にて新作映画を紹介中。私にとって編集とは、世界の見かたを増やす手段だと思っています。
http://mninm.com