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Interview

河合佑哉
本当のおいしさは、
どれだけの人に
知られているのだろう?

2020年05月15日

 

愛知県名古屋市にある〈ゴルピーコーヒー〉のオーナー焙煎士、河合佑哉さん。河合さんが焙煎したコーヒー豆は、日本国内だけでなく、海外に暮らすコーヒー好きからも注目されています。届けていきたいものは、おいしいコーヒーだけでなく、それによって生み出される感動体験。河合さんがめざすコーヒーとは。

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型を打ち破ってたどり着いた自分なりの焙煎

―おじいさまの代からコーヒーの仕事に携わってきたそうですね。

はい。祖父から父、私と親子三代でその時代のコーヒーを追いかけてきました。時代によってコーヒーを囲む環境や社会も当然違っています。祖父の時代は戦後まもなくコーヒーを喫茶店で飲むことがトレンド。お身内やご自身も喫茶店での思い出を語る方も多くあるのではないでしょうか。また青春時代の1ページが喫茶店そのものという方も多いかと思います。後に缶コーヒーが出て、コーヒーはさらに身近に。誰もがその褐色の飲み物でコーヒーの味はほとんどの方は想像がつくものになっていきます。

そして、カフェやコーヒースタンドと、変遷をたどっていき、今はスペシャルティコーヒーも注目されるようになりました。その時代・世代で扱うものは違ってはいますが、コーヒーを家業に持っている家に生まれたことはとてもありがたいことだったと思います。

業界の今昔もそうですが、「目で見て肌に入っている」のと、「本で勉強してなんとなく知っているでは大きな違いがある」。そう、思っています。

店舗は名古屋市内にある。ネット販売にも力を入れており、チャットサポート機能など、スタッフに相談しながらコーヒーを選べる工夫も。「店舗はひとつだけですが、この場所からどれだけ広く世界中にコーヒーを届けることができるのか、それが楽しみでやっています」。
ゴルピーコーヒー 川名店|愛知県名古屋市昭和区駒方町2-4-2

 

―幼い頃からずっとコーヒーが身近だった河合さんが、コーヒーに夢中になったきっかけがありますか?

ありますね。育った環境もあってコーヒーに身近だっただけにこんなコーヒーの世界があるとは!というのも人一倍大きかったように思います。家業に入る前にお世話になったコーヒーの会社では品質管理の部門があり、その部門の先輩方はカッピングといって、テイスティングすることが仕事の主流でした。その仕事は当時の自分にとって最高に憧れの存在。

別の部門で働く自分にも会社からカッピングのトレーニングの機会をもらって、一から勉強させてもらったことは今でも感謝の気持ちでしかありません。とにかくコーヒーのカッピングはインプットの世界です。回数や経験が大事な要素になります。

ある時のカッピングで「こんなコーヒーがあるのか!」という出会いがありました。それはグアテマラ産パカマラ種。コーヒーの二大潮流の柑橘系・チョコレート系とは全く違って、一瞬でわかるパパイヤやマンゴーといったフルーツ感。そして素晴らしい透明感。

正直びっくりでしかありません。あの出会いがあって、今の自分があるといっても良いくらいの重要なきっかけでした。「こんなコーヒーを仕事にしたい」。それまで漠然としていた仕事への目的も、このとき決意できたように思います。1杯のコーヒーでできる感動体験というのは大げさかもしれませんが、お客様の毎日にとって、気づきやきっかけの時間づくりとなるものをお届けしたい。そして、まだまだ知られていない本当に美味しいコーヒーだけを扱っていこうと決め、〈ゴルピーコーヒー〉を立ち上げました。おかげさまでようやく5年、まだまだこれからです。

 

―焙煎士として、モットーにしていることはありますか?

シンプルなだけにとても難しい質問です。答えになるかどうかですが、コーヒーの仕事は生豆選びから始まり、1杯のカップに注がれるまで、トータルで考えるのが大事なことが今ようやく知られつつあるようになってきました。私も焙煎するだけの断片的な仕事ではなく、生豆選びをする。買付前にも必ずカッピングして、テスト焙煎もします。そうして本番で焙煎した豆も、実際にお客様に販売する前の段階で再びカッピングします。

コーヒーはまず、生豆選びから始まります。コーヒーの味わいの良し悪しの約7割を占める生豆のクオリティに重きを置いています。おかげさまで修業時代からのプロセスも講じて今は生豆の国際品評会の審査員も務めさせていただいています。なので、モットーは、本当に良い生豆を見極める力を常に磨いていくこと、かつ、日本に生産国から生豆が届いたときに焙煎によって美味しさを最大限に引き出すこと。生豆の個性をどれだけいかしきるか。ということでしょうか。

 先ほどの話と重なる部分が多いかもしれませんが、本当に美味しい生豆だけを扱う。そのためには生産国に赴いて農園でのカッピングをしたうえでの買付を毎年続けています。コーヒーを取り巻く技術革新と変化も直接目にして、話をして知っているというのは、まさに百聞は一見に如かず。

買付では一度の渡航でおおよそ2週間かけて多くの農園を回り、品質の良いコーヒーが生まれる現場をみて、カッピングをして体感し、美味しくなるその理由に触れる時間です。現地では、毎年素晴らしいコーヒーとの出会いもありますが、その時間は十分に美味しさを出し切るようにしようという意欲にもつながります。また、農園主が手塩に育てた生豆が海を渡り、自分の手元に届いたときも人の力を感じます。味や風味には書ききれない思いも乗せていけたら最高と思い、お客様との積極的なやりとりを今の形に沿って多様にしています。店に行ったような気分を電話やSNS、ホームページからも感じてもらいたいからです。

名古屋市に拠点を置く日本を代表する洋食器ブランド「ノリタケ」のカップでコーヒーが提供される。

 

―実際に生豆選ぶときに基準がありますか?

スペシャルティコーヒーの国際品評会に参加している現場で実際に高得点の豆でも、現地の買付でも、カッピングでつけられる点数の評価とは別の、自分の中で美味しいと思う基準も常に大切にしています。それは同時にお客様が思う〈ゴルピーコーヒー〉らしさ、でもあるかもしれません。またお客様にも共感してもらえるかというのも同じく大事にしています。

透明度も高くて、繊細な奥行きとバラエティに富んだ風味があり、何杯も飲みたくなるコーヒー。するするっと滑るような感覚が持てるかどうか。ですね。どうしてもコーヒーというと業界としても男性色が強いイメージが根強いですが、〈ゴルピーコーヒー〉のお客様には女性もとても多くいらっしゃいます。肩の力を抜いて「コーヒーは単に苦い飲み物の壁」にすっと風穴が開いて、目の前にあったのが〈ゴルピーコーヒー〉の1杯だったら嬉しいです。

美味しいねというのはシンプルですが、「そのおいしさ、うまく言葉で表現できない」ということが心から楽しんでもらっている証と、とらえています。

 

―河合さんは、ご自身の焙煎をどのように捉えていますか?

焙煎と聞いて皆さんはどのようにイメージされますか? コーヒーの好きの度合いには関係なく、難しい仕事で、まだまだ想像がつかない世界のようではないでしょうか。

確かに、焙煎機の温度や数値、時間を管理することは当たり前に重要です。焼くときには他の人もやるように、もちろん私自身も記録をとります。でも、それだけをやっていても当たり前のことだけなので最高にはならない。焙煎の仕事は他の仕事と何ら変わらないのですが、予習や経験で方法論は頭に入っていて、記録も取り進めるのがまずは大事。ですが、それだけではなくて「きちんと結果を確かめる」こと。また結果によって再調整が必要な場合は拒まず挑戦することです。一度仕上げた自分の「型」を再調整していくこと。そんな、常にベストを考え直す余裕のある心持ちで焙煎に向き合うのが私の「型」かもしれません。

 

仕事は「段取りが割」なんて言いますが、僕のスタンスはそれに近いかもしれないですね。割方は終わっているわけですから、あとは豆の色や香りの変化を楽しみながらリラックスして焙煎しています。なんか、これも怒られそうですね(笑)。

 

―そうしてたどり着いた、河合さんなりの焙煎理論は?

何のために焙煎するのか、私にとってはお客様に飲んでもらって美味しいと喜んでもらうためです。ですので、あまり理論らしい理論は持ち合わせていません。また、焙煎をはじめとしたコーヒーの現場はとても不安定な要素が多いです。本来であれば全てのあらゆる要素を明確にして理論を作り上げていくものですが、そうでない環境で作りあげられた理論は危険ともとれます。

 強いていうならば焙煎の目的がはっきりしていますので、実際、店の外からも中からも丸見えの焙煎室で、人の笑顔を感じながら焙煎機としっかり向き合ってよく見るようにしています。集中はしながらもおおらかに明るい気持ちでいると、結局のところ細かい部分の変化に五感が行き届くようになっていますね。

だから、焙煎機の下準備から片付けまで焙煎機は自分の仕事の相棒ですし、丁寧にすすめます。仕事は段取りが八割。と言われるように焙煎中以外のことにも重きを置いて取り組んでいます。

 

たった1杯のコーヒーが、心をゆさぶることもある

 

2019年にコーヒー袋のパッケージデザインをリニューアル。生産国の世界観をイメージした総柄にしている。

 

―生産国にも通われていますが、現地に行くからこそ、見えてくるものがあるのでは?

ここ5年ほどは毎年のように現地を訪れています。自分自身の焙煎も、生み出せる味も、すごく広がりました。というのも、焙煎に関しては、現地の人に聞いてみるのが一番だと思っています。向こうに行くたびに現地の輸出業者の人たちと交流しているんですが、彼らはその国でつくっているさまざまな種類のコーヒー豆を毎日のように焙煎しているんです。

 例えば、同じコスタリカ産の豆でも「この品種の豆は焼くことでこうなる」「この品種の豆を焼くときのポイントはここだ」といったように、その地域のすべての豆の特性をよくつかんでいて、ポテンシャルを十分に引き出すことができています。

コスタリカの農園にて。「生産者は、自分の同士のような感じがしています。よく『忘れられないコーヒーの味は?』と聞かれるのですが、生産地に行くたびに感動するような味わいのコーヒーに出合います」。

 

現地でテイスティングさせてもらった味を、そのまま日本に届けたいと思うこともたびたびあります。それで、彼らの焙煎方法を教えてもらって、それを自分の店の焙煎機に当てはめて考えたりして。ですから、今の僕の焙煎は現地仕込みとも言えます。

 それから、現地では、そこでしか手に入らないコーヒー豆に出合えます。生産量が少ない品種ですと、年に麻袋でひとつ分も収穫できないものもあるほどです。しかも、味も素晴らしいです。

 スペシャルティコーヒーは、生産者にとっても、大きな挑戦です。ある生産者についてですが、もともとはコマーシャルコーヒーをつくっていたけれど、適正価格で取引してもらえないために、いつ農園を閉じてもおかしくないような状態が何年も続いていた時も経験していたり。そうした危機を乗り越えるためにスペシャルティコーヒー専門でやっていくと決心して、本当においしいコーヒーを届けたいという思いで真摯につくっている。その感じは、「ゴルピーコーヒー」ともリンクするんですよね。僕も、本当にいいものをお客さんに届けたいという思いでやっていますから。

ドリップバッグは幅広いラインナップを取り揃えている。手軽にいろいろな味わいを楽しむことができるとあって大人気。

 

―河合さんが、コーヒーを通じて広げていきたい世界とは?

まだ素晴らしいコーヒーとの出会いがない方にも出会うきっかけをどこまでつくることができるかの挑戦は続けていきたいです。ほかの食べ物で多くの方が経験のあることだと思いますが、本当に美味しい食べ物が口に入ったとき、「こんな美味しいのは食べたことない。自分がこれまで食べてきたのは何だったのだろう」っていう感覚。これがコーヒーでもあると信じています。

このAKATITIの読者の方にも、そうそう!と思われる方もあれば、そんな世界があるのか、と思われる方もいらっしゃると思いますが、「牛肉の世界のA5ランクのお肉」のような認知度合いは、スペシャルティコーヒーにおいてはまだまだだと思います。

でも、現代においてコーヒーはほとんどの成人の方が飲んだことがあるものです。ほとんどの人の頭の中にあるコーヒーだからこそ、そんなびっくりするような感動体験をより多くの人に感じていただきたいと思っています。

 〈ゴルピーコーヒー〉はコーヒーを通じて本当に美味しいという感覚を届け、心豊かに暮らす時間をお届けしたいのです。これまでもブランド立ち上げから常に大事にしていることが、「手の届く上質・ご家庭での再現性」です。専門店で飲まないとあの味は出ないという感覚のコーヒーではなく、「お家で飲むコーヒーが一番美味しい」というところです。というのもあり、店舗でもホームページでもおすすめの淹れ方から、コーヒーの商品説明まで積極的にお見せしています。

ネガティブなニュースに、全世界の心が荒れ模様でも、コーヒーは皆様のご家庭に届いた後そっと気が付けば手元にあるような、「そばにいてくれる安心感」も一緒にお届けしたいですね。こんなときだからこそ、繋がることの大切さにも気づかせていただいています。

安心して暮らせる時間をコーヒーで少しでも作りたい。店の構えが小さな一店舗でも地球の裏側にいる方々へも自分たちのコーヒーを届けることのできる時代になりました。自分たちにできることはまだ山ほどあると思っています。

 

河合佑哉 KAWAI Yuya

愛知県出身。大学卒業後、東京のコーヒーと食品の販売会社にて勤務。2013年より家業であるコーヒーの卸売会社の株式会社松屋コーヒー部へ入社。2014年国際品評会である[Cup of Excellence Mexico2014]にオブザーバー審査員として初参加。以降は毎年国際審査員としてCOEに参加。2015年、スペシャルティコーヒーに特化したGOLPIE COFFEE 〈ゴルピーコーヒー〉を立ち上げ。同年、JCRC2015Japan Coffee Roasting Championship2015)優勝。

 

 取材・文:菅原淳子