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Culture

涼やかな風を感じて

2020年10月02日

 

 

こんにちは。錦です。
長い梅雨を経て、ようやくやってきた今年の夏。陽の光を恋しがっていたのはわたしだけではないようで、誰もが夏の到来を心から喜んでいるように感じられました。しかし、それも束の間のこと。まるで太陽が遅れを取り戻そうと言わんばかりの、かんかん照りの日々が待ち受けていたのでした。まさかこんな猛然とした暑さが続くことになろうとは…。朝も早よから強烈な陽射しが注がれ、うっかりするととろけてしまいそうなほどでしたね。たまに降る夕立が、こんなにもありがたいこともなかった。みなさんはどんな夏を過ごしていましたか?

今夏はひとつ、ひときわ印象深い頂きものが届きました。今回はそのお話をさせてもらおうと思います。

お盆明けのとある日のこと。西陽がすっかり沈んだ夜のとばり、身も心もすっかり上気したままに帰宅しました。いつものように郵便受けをあけると、舞い込んでいたのは一通のおおきな封書。差出人欄には、友人夫婦の名前が連なっています。はやる気持ちを抑えて玄関へと急ぎ、いざ開けてみると…中には、コーヒー豆とメッセージカードが収められていたのです。

薄茶色の紙に黒インクで控えめに印字されたパッケージは、凛とした空気をまとっています。「夏木立」と名付けられたコーヒー豆は、東京・台東区三筋にある蕪木が、ミナペルホネンのためにブレンドしたものでした。

あくる朝、早速一杯淹れてみることに。封を切った瞬間、華やかでありながらしっかりとした香りが漂ってきました。挽かれた豆はいっそう香ばしく、湯を落とすとふんわりふくらむようすが鮮度の高さを物語る。カップに注がれた艶やかな琥珀色にうっとりします。そうっと口に運んでみると、一瞬にして涼やかな高地の林道へと誘われてしまいました。生い茂る木々をすり抜ける風が、そうっと頬をなでる。そんなすがすがしさに満たされました。

一方、愛らしい猫たちが描かれたカードには、「Happy Birthday」の文字が踊っています。そう、彼らはわたしの誕生日を祝ってくれたのです。夫婦それぞれからのメッセージに、彼らの子どもたちの似顔絵が添えられていました。画家である奥さまらしいユーモアのある心遣い、つい笑みがこぼれます。手書(描)きのお手紙っていいですね。相手の温度感がじんわりと伝わり、あたたかな気持ちになります。

彼ら家族とは年明けにお出かけして以来、気づけば半年以上の月日が経っていました。巣ごもりの期間にはたびたびメッセージのやりとりをし、互いの近況報告だけでなく、見通しのつきにくい情勢に対して募る想いを吐露したり、読み進めている本や気に留めた新聞記事を紹介しあってきました。たやすく会うことが叶わないからこそ、心と心でつながっていられること。こうした間柄はとてもありがたく、ほんとうに救われました。そして、彼らもまた、自分たちの居場所で現状とじっくり向き合っている。みなそれぞれが懸命に生きているのだと感じ、わたしも自分なりの足どりでしっかり歩いていこうと勇気をもらいました。

想像力を掻き立てる、詩的でおいしい贈りもの。うだるような気だるさでコテンパンになった五感をみずみずしく包み込み、すうっと沁み渡ったのでした。

蕪木
Website: http://kabukiyusuke.com/

錦 多希子 Takiko Nishiki
ことばと本を相棒とし、あらゆる分野の表現者と手を結んでその活動と世の中とをつなぐ。ウェブ媒体での連載、展覧会・作品集・雑誌への寄稿のほか、アートブックの選書や企画立案を担う。また不定期で朗読会をひらく。