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特別対談|ラグビー稲垣啓太選手 x 焙煎士 後藤直紀さん

2021年01月20日

 

ラグビーチーム「パナソニック ワイルドナイツ」のメンバーであり、2度のワールドカップ出場経験をもつ稲垣啓太選手。そして福岡のコーヒー店「豆香洞」オーナー焙煎士で、2013年「World Coffee Roasting Championship」優勝者の後藤直紀さん。世界を舞台に挑戦し続ける2人による、垣根を越えたクロストーク。コーヒーを片手に、なごやかな雰囲気で対談はスタートしました。

 

始まりは、中学生時代のブラックコーヒー

稲垣選手:
はじめまして。今日は、焙煎の世界チャンピオンとお会いできるということで楽しみにしていました。

後藤さん:
私もです。ラグビーファンとしても、コーヒーにたずさわる身としても、お聞きしたいことがいっぱいです。

後藤さん:
今でこそ、コーヒー好きとして知られる稲垣選手ですが、そもそも好きになったきっかけはなんだったのですか?

稲垣選手:
初めて飲んだのは中学生くらいのころです。両親がコーヒー好きで、ちょっと格好つけるみたいな感じで。そのときは、『なんだこの苦い汁は』って(笑)。でも飲み続けていたら、だんだん後味の苦さがやみつきになり、気がつけば食後はコーヒーが欠かせなくなっていました。

後藤さん:
最初からブラックで飲んでいたんですか?

稲垣選手:
昔から、甘いものが得意ではないので基本は砂糖なしのブラックですが、ミルクを入れて味や香りが変わるのを楽しむことはありますよ。

ドリップやエスプレッソ、あとはラテにしたり、いろいろな楽しみ方ができるのがコーヒーのいいところですよね。一日に6〜7杯飲むこともあり、日常のツール、いやそれ以上かな。切っても切り離せないものです。

 

ルーティーンよりも、自分の気持ちに忠実に

『The Roast』を使った焙煎したての豆の香りに「コーヒーは、この香りがいいんですよね!」と稲垣選手。

後藤さん:
コーヒーはひとつのカップのなかに、「いくぞ!」という気持ちになる覚醒作用と、香りによるリラックス作用がありますよね。ラグビー選手という立場においては、どんな使い方をされているんですか? 

稲垣選手:
僕は大きく2つに分けていますね。
ひとつは、トレーニングや試合前に、いわゆる「スイッチ」を入れるための一杯です。「いくぞ!」っていう気になるので、エスプレッソをショットで飲むことが多いですね。カフェインがダイレクトに入って、すっと自分のスイッチが入る気がします。

もうひとつは、リラックスしたいとき。四六時中ラグビーのことを考えていると、頭の中がいっぱいになってしまうので、オフの時間を楽しもう、という切り替えのときですね。エスプレッソよりもドリップやアメリカーノ、ラテなど、そのときの気分で選んでいます。

後藤さん:
なるほど、すごく上手に使い分けてらっしゃるんですね。意識的に飲むものを切り分けてらっしゃるんですか?

稲垣選手:
自然と選んでいますね。スポーツ選手って、よく「試合前は必ずこれ」というルーティーンを作るじゃないですか。僕は、そういうのは作らないようにしていて、それがなくてもできるようにトレーニングや準備を重ねているつもりなんです。だから試合前に飲むものも、これと決めたルーティーンにはせず、気分によって変えています。そうはいっても、試合前はやっぱりエスプレッソが多くなりますね。

後藤さん:
スポーツ選手はゲン担ぎをされる方が多いと思っていたので意外でした。ブラジルを飲んで勝ったから、試合前はブラジル……みたいなのがあるのかと。そのときの気持ちに忠実に選んでいるんですね。

稲垣選手:
そのほうが楽しいですよね。今の気分で何を飲みたいかは変わりますし、気分や気温、今日はちょっとゆっくりしたいからこれかな、とか。普段は深煎りで苦味のあるものが好きですが、夏は酸味のあるコーヒーが飲みたくなったりもします。そうやって選んでいるうちに、飲み方の知識や選択肢が増えて……、いろいろな人の話を聞いていると、あれもいいな、これもいいなと楽しみが広がってきましたね。

 

ラグビーもコーヒーも、いろいろな個性を受け止めたい

後藤さん:
すばらしい楽しみ方だと思います。自分の好みのコーヒーはこれ、と決めてしまう人も多いんですよ。稲垣選手は、それぞれの個性を認めていて、懐の深さを感じます。

稲垣選手:
ラグビーも個性の集まりです。いろいろな人種、個性、文化を受け入れることも、強くなるための大切なファクトです。じゃあどう分かり合うかというときに、チームのみんなでコーヒーを飲みに行ったこともあるんです。僕の国ではこういうのが人気だ、僕はこれが好き、って話ができて、その時はコーヒーがみんなの会話を盛りたてるツールになりましたね。

 

コーヒーがコミュニケーションの橋渡しとなったワールドカップ

産地の違いを味わうべく、それぞれ飲み比べ。「うん、深煎りが一番好きですね」

後藤さん:
ワールドカップのときも、コーヒーを飲んでらっしゃったんですか? ワールドカップを通じて思い入れのある一杯があれば、お聞きしたいです。

稲垣選手:
その土地のコーヒーも楽しみますし、ホテルや宿舎でも飲んでいます。
試合が休みの日に、仲間たちとコーヒーを飲みに出かけたりもしましたね。

コーヒーを飲みながら、ほかの選手たちと、この試合はこうだったね、もっとこうしたらよかったなど、いろいろな話ができるんですよ。一緒にコーヒーを飲んでテーブルを囲むと、大会中の張り詰めた糸が少しゆるんで、そこからまた次の試合に向けてがんばろうという気持ちになりました。そういう意味では、大会中も合宿中も、休みの日にみんなで行ったコーヒーショップでの一杯というのは思い出深いです。

 

コーヒーを介した、ちょうどいい距離感

後藤さん:
大きな選手たちがたくさんで、お店の人たちもびっくりだったでしょうね。

稲垣選手:
ちょっと浮いていたと思います(笑)。
でも世界各国の選手も、コーヒー好きが多いんですよ。2019年の日本が開催国だったときも、ニュージーランドやイングランドなど、いろいろな国の代表選手が来ていました。「Coffee Supreme Tokyo」や「iki ESPRESSO」は、ニュージーランドがルーツの店だからか、そこの選手に会ったりもしましたね。

他国の選手とコミュニケーションをとれる場にもなっていましたし、コーヒーをお店で飲むというのが、やっぱり僕は好きですね。誰と、どこで飲むのか、というのは大切にしていることです。

後藤さん:
ひとりでも楽しめるけれど、大勢でも楽しめる。コーヒーはお酒とはまた違った、ちょっといい感じの距離感が保てますよね。

稲垣選手:
まさにそうです。その距離感があるから好きなのかもしれません。ひとりの時間もみんなとの時間も、両方楽しませてくれる。これからもそういう時間を大切にしていきたいです。

 

味作りの肝となる、焙煎の世界チャンピオンとして

福岡・白木原に店を構える後藤さんの店、「豆香洞コーヒー」。オープン時は、赤いポットが目印。

稲垣選手:
後藤さんも世界を舞台にいろいろな経験をされてきたんですよね。

後藤さん:
コーヒーの世界にも、いろいろな競技会があります。バリスタ、味を見極めるもの、淹れ方を競うもの……。そのなかで、僕は2013年に初めてできた、焙煎士の技術競技会(※)に日本代表で出場しました。

焙煎は裏方仕事ですが、味の味作りの肝にもなる作業です。同じ焙煎といっても、北欧、トルコ、アジアなど、各国にお国柄が出ていておもしろいんですよ。

※「World Coffee Roasting Championship」焙煎技術を競う世界大会

 

ひたすら練習する。プレッシャーに打ち勝つための、2人の共通点

後藤さん:
ただ、やっぱり国を代表しているわけですし、めちゃくちゃ緊張しましたね。変な成績では日本に帰れない、という気持ちだったので、プレッシャーが大変でした。

稲垣選手も、試合前のプレッシャーは相当なものだと思いますが、どんなふうに捉えてらっしゃいますか?

稲垣選手:
強がって、「プレッシャーはまったくないです」と言っていた時期もありました。でも、いざ試合でプレッシャーに直面したときに、正しい判断ができなくなっては困ります。そこで、チームで話し合い、プレッシャーを感じている自分を認めるところからスタートしました。そこから、プレッシャーをはねのけるためには、何が必要かと考え、準備を重ねること、本番に似たシチュエーションを繰り返し経験することだという結論に至ったんです。

今までやってきた経験は間違っていないと100%信じて、あとはもうやるだけという覚悟を決められたとき、プレッシャーがある種の楽しみに変わりました。これを乗り越えて力を出し切ったら、絶対に楽しい結果が待っている。その結果を出すための準備や練習はしてきた。このあとの最高の結果が楽しみで仕方ない、という状況を作り出すことができました。

後藤さん:
レベルは違いますが、すごくよくわかります。
私も世界大会のプレッシャーに押しつぶされそうになっていたとき、もう練習するしかないと思いました。競技本番は与えられた1時間のなかで焙煎をするんですが、最初の30分はガチガチに緊張して、もうダメだと感じて。でも何千回と練習をしてきて、こんなにやってきたのにもう終わるんだ、と思ったんです。そうしたら、あとはもう粛々と、淡々と焼くしかないと、ふっと心が軽くなり、そのあとはこれまでのなかでも一番の、思った通りの焙煎ができました。それが優勝につながったんです。

稲垣選手:
やっぱりそうやって、自分の準備してきたことが正しかったと証明されたときは、最高に気持ちがいいですよね。その瞬間を味わうために、またあの準備をするのかと思うと憂鬱にもなるんですが(笑)。

 

強くてタフネス、甘くない。ショコラ香る、稲垣選手のイメージブレンド

後藤さん:
オンとオフでコーヒーにそれぞれ機能をもたせているということでしたが、理想のコーヒーというのはありますか? こういうのがあれば試合前にガッといけそうだとか、思い描く味はありますか?

稲垣選手:
うーん、なかなか難しいですが……。僕が一番好きな味は、ブラジルの方のショコラのような香りが入った、それでいて甘みがない、すっきりとした味わいです。酸味は抑えめで、苦味はガツンとくるものが好きかな。

後藤さん:
甘みはなく、苦味はガツンと。そこからスッと消えて、後口はさっぱり、みたいな感じですかね。甘みがないというのもおもしろいですね。
だんだんイメージできてきた気がします。ブラジルだけだと難しいのかな、ブレンドで仕上げていくことができるかもしれませんね。これ、ぜひ作ってみたいですね。

稲垣選手:
えっ、いいんですか!?

後藤さん:
頼まれて味作りをするのは、やりがいもあるし楽しいんです。稲垣選手のためなら、作ってみたいです。ぜひやりましょう!

後藤さん:
ゴールのイメージがはっきりすればするほど、私たちは味作りがしやすいんですよ。苦味があって、結構パンチが効いた味で……、私が思う稲垣選手のイメージにぴったりな気がしますね。強くて、タフネスで、甘くない。「笑わない男」だなんてよく表現されていますけど(笑)。いろいろなコーヒーを楽しんでらっしゃる稲垣選手のここぞというところに、ピタッとフィットするコーヒーを作っていけたらと思います。

稲垣選手:
いや〜、これはうれしいですね。この一年で一番テンションが上がりました! 強そうなコーヒー、早く飲んでみたいです。よろしくお願いします!

 

コーヒーは、フィールドと日常を行き来するスイッチ

後藤さん:
では最後に、稲垣選手にとってコーヒーとは、なんでしょう。これ、わたしも投げかけられると、コーヒー屋なのに悩む質問なんですが……。

稲垣選手:
ラグビーだったら簡単に言えますが、コーヒーとなると悩みますね。
でも、僕にとってはやっぱり「スイッチ」ですね。自分のオンオフをつかさどっている部分の大半を占めているのがコーヒーだと思います。

後藤さんにとっては、コーヒーとはなんですか?

後藤さん:
たくさんありますが、コーヒーは「人を見られるもの」でしょうか。
どういったコーヒーが好きか、どんなシチュエーションで飲むか。今日、こうしてコーヒーを中心にお話をしていても、稲垣選手という人がカップの向こう側におぼろげながら見えてくる気がしています。だから私にとってコーヒーは、人を理解するため、つながるための存在なのかなと思います。

稲垣選手:
なるほど。ここでのお話だけでも、いろいろと広がっていきましたし、コーヒーの世界ってほんとうに奥が深いと改めて思いました。

 

「好き」を追求して仕事にするということ

後藤さん:
ちなみに、稲垣選手、あなたにとってラグビーとは?というのもぜひお聞きしたいです。

稲垣選手:
僕にとってのラグビーは、もう「仕事」です。こう言うと、え?って思われるかもしれませんが、ラグビーでお金を稼いで生活しているわけです。
ラグビーを仕事にすると決めてからは、正直なところ昔のようにラグビーを楽しめなくなっているんですよね。やはりプロですから、結果にフォーカスされ、結果が評価になります。
でも、そんななかで、唯一楽しい瞬間というのが結果を出したときです。自分がやってきたことは正しかったと評価されたときは、うれしさと楽しさがこみ上げてきますね。

後藤さん:
すばらしいなぁ、かっこいいですね。私も仕事って言えばよかった(笑)。
でも、結果を求められ続けるというのはすごくわかります。私も、自分だけのコーヒーを作っているわけではなく、やっぱり結果を求められます。
今、お店を始めて12年目ですが、10年くらいはコーヒーをおいしいと思わなくなっていました。でも、お客さまがおいしいと言ってくれるから、それが正しいんだと思ってやってこれましたね。

 

自分の重ねた努力が、誰かの喜びになる

後藤さん:
コーヒーのプロだというと、「好きなことをして生活できていいね」って言われたりもするんですよね。

稲垣選手:
わかります、僕も言われますね。

後藤さん:
コーヒー好きの方が来るお店ですから、当然ですよね。でも、仕事にすると楽しいの意味が全然変わります。コーヒー自体はつらいこと、でもそれが誰かの喜びに変わるからやっていけるのだと思っているんです。

稲垣選手:
僕も、自分のためだけにラグビーをしていたところがありました。でも、前回のワールドカップでは、その結果でまわりの方から「ありがとう」と感謝の言葉を言われて、ほんとうにラグビーをやっていて良かったなぁと。そうやって言っていただけるように、また頑張らないといけないんだと思わせてもいただきました。ラグビーをやっていて「ありがとう」と言われる日がくるなんて、思いもしませんでしたから。
こうしてお話していると、ラグビーとコーヒーに似た部分があって、やっぱりおもしろいですね。なんだか延々と話せそうな気がしますね。今度はぜひ、福岡のお店にお邪魔させていただきますね。

後藤さん:
はい、ぜひ! お待ちしています!

 

構成・文/藤沢あかり

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