close

メンバー登録は無料です

メンバー登録すると、招待状が届きます。

アカチチは、コーヒーのおいしさを伝えるライフスタイルマガジンです。

記事の執筆には、コーヒー業界にとどまらず各界で活躍するさまざまな方をナビゲーターとして迎え、コーヒーにまつわる出来事を様々な角度からお伝えしていきます。ナビゲーターから、他では得られない招待状もお届けします。

利用規約 を確認してください。

LINEアカウントを利用して登録を行います。

本Webサービスでは、ログイン時の認証画面にて許可を頂いた場合のみ、あなたのLINEアカウントに登録されているメールアドレスを取得します。
取得したメールアドレスは、以下の目的以外では使用いたしません。また、法令に定められた場合を除き、第三者への提供はいたしません。

  • ユーザーIDとしてアカウントの管理に利用
  • パスワード再発行時の本人確認に利用
  • 通知、お知らせの送付
  • HOME
  • コーヒーの達人
  • 後藤栄二郎 スペシャルティのおいしさを、真摯に、嘘偽りなく伝えたい

コーヒーの達人

2021年03月04日

[2021年7月12日更新]インタビュー

後藤栄二郎 スペシャルティのおいしさを、真摯に、嘘偽りなく伝えたい

北海道・札幌を拠点に、スペシャルティコーヒーのパイオニアとして業界を牽引するひとり、「丸美珈琲店」店主・後藤栄二郎さん。さまざまなタイトルの称号や、世界クラスでの資格保持というプロフェッショナルな肩書きをもつ一方、スペシャルティコーヒーに気軽に親しんでもらうための活動にも尽力しています。その背景にある、「お客さまのために」という後藤さんの真摯な哲学をうかがいました。

自分の行動で、まわりに楽しんでもらいたい

丸美珈琲店

――ご自身でコーヒー店を立ち上げた後藤さんですが、ご実家も自営業だったそうですね。

祖父は帽子屋、父はジンギスカン屋と、札幌で代々事業を営むという家系で育ち、自分もなにか新しいチャレンジをしたいと思っていました。学生時代は生徒会長をやったり、夏は富士登山、冬はスキーと、仲間達を何十人も集めて自分たちでツアーを一から企画したり。そういう、自分で考えてみんなで楽しむことが大好きだったんです。

大学3年生になり、進路を考えるタイミングで、父にお願いして地元の創業者の方たちに話を聞かせもらいました。そのなかのひとりが、『可否茶館』の創業者、滝沢信夫さんでした。

当時、可否茶館は札幌に10店舗くらいをもつ店だったと思います。広く商売をしながらも、品質の良さを貫き、真摯にお客さまと向き合うという滝沢さんの考えに感銘し、この人のもとで働きたい!と思ったのが、コーヒーの世界に入るきっかけです。

コーヒーマイスターのバッジ

丸美珈琲店スタッフのエプロンの胸元には、コーヒーマイスターのバッジが光る。

――コーヒー好きが高じてのスタートではなかったのですね。

はい、むしろ最初はちっともおいしいと思えませんでした。もちろん、コーヒーのことをもっと知りたいと、いろいろな店をめぐっていましたし、滝沢さんの思想には共感していましたが、「自分で始めるビジネス」という意味ではコーヒーに魅力を感じられませんでした。

コーヒー業界を変えた、スペシャルティという新しい潮流

スペシャルティという新しい潮流

――しかし可否茶館で9年間勤め、全店の販売責任者まで任されたあと、ついに独立されました。ご自身もコーヒーでやっていこうと思ったのはなぜでしょう?

スペシャルティコーヒーと出会ったからです。
世界の潮流のなかでも、スペシャルティはまったく新しい別物だと感じました。これは一部のコーヒー屋が努力してできている味ではない、なにか世界規模で新しい動きがあるぞと。当時はまだスペシャルティが生まれた初期の段階でしたから、そこを調べていくうちに、どんどんはまっていきました。

嘘偽りなく真摯に取り組める、可能性に満ちたスペシャルティコーヒー

可能性に満ちたスペシャルティコーヒー

――そこにご自身の「ビジネス」としての魅力もあったということでしょうか?

スペシャルティコーヒーには、未来に向けての魅力を感じました。
商売一家で育ち、近隣も商売をする人が多いなかで、その光も闇も見てきたつもりです。経営者のなかには、事業に没頭しすぎるあまり、周囲や家族から孤立する末路をたどってしまう人もいます。だからこそ、自分がやるときには、家族も従業員も誰も不幸にすることなく、そして嘘偽りなく、真摯に事業をやりたいと思っていました。それならば、そこで取り組む商材は正直なもので、これから良くなる可能性を秘めているものでなければ、長くは続けられません。

そこにピタリとはまったのが、スペシャルティコーヒーでした。
勉強し、生産者との関係を築きながら、よいコーヒーを作っていくのはほんとうにやりがいがありました。今もまだまだ途中段階で、より良いほうへ向かっていくタイミングで関わらせてもらっているのはすごくありがたいですし、僕の好奇心をずっとくすぐり続ける存在です。

すべては、長くお客さまに喜んでもらい続けるため

焙煎

焙煎は一回一回が真剣勝負。香りや状態のささいな違いを見極めながら、コーヒー豆を最高の状態へと導いていく。

――生産者とは、どんなふうに向き合ってらっしゃいますか?

僕は、自家農園をもったり、農園パートナーとして毎年同じところから買い付けたり、ということをしていません。
生産者とは、コミュニティのような仲間意識での付き合いではなく、良いコーヒーを作り続けてくれる存在であってほしい。だから、あくまでも生産者が作り上げたものに対して、正しい評価と情報を伝え、そのうえで適正価格を支払うことを大切にしています。

もちろん、生産者に寄り添うことも大事です。
しかし一番のゴールは、お客さまにおいしいものを長く継続して届けていくこと。お客さまに喜んでもらい続けるためにはどうしたらいいかと考え、徹底してお客さま寄り、長い目で見てこの業界が続くためにという視野でやっています。

サステナブル(持続可能)なあり方

――コーヒー界における、サステナブル(持続可能)なあり方ということですね。

そうです。農園や生産者側も、お客さまも、そして自分たちの店も、長く続けていくためです。

そのためにも、必ず生産者と一緒にカッピング(その年の品質を確認するテイスティング)をしますし、共通の認識や基準を確立させるためのディスカッションを重ねています。生産者が、自分のつくったものがどうなっているかわからない、という状況では成長していけません。輸入業者との信頼関係を育てていくことも大切ですし、明確な情報をきちんと提示したうえで、適正価格を支払い、より良くなっていく方法を探っていけたらと思います。

新鮮な刺身のようにフレッシュなコーヒーのおいしさを伝えたい

香りのテイスティング

店頭では新しい味や好みと出会えるよう、香りのテイスティングも。

――サードウェーブコーヒーがブームになる前、いわば黎明期からスペシャルティに取り組まれていますが、どのように新しいおいしさを伝えてこられたのでしょうか?

まず大きな違いである香りを伝えました。
花も、枯れているとワラのような香りですが、フレッシュな状態なら個々の香りがあります。今までのコーヒーは、乾燥した状態、つまり枯れた花に近かった。それをおいしく飲む方法の一つが深煎りだったんですね。

たとえば魚を食べるとき、内陸に住む人は干したものを焼いて食べますよね。対してスペシャルティは、お刺身のようなもの。そこにはオイリーな油分や、独特の酸味、甘みがあります。ただ、人の味覚というのは経験から判断したがります。焼き魚しか知らない海外の人に、突然お刺身を差し出しても、おいしいと思えないかもしれません。

コーヒーマイスターの認定証

スタッフの育成にも力を入れている。店内には、コーヒーマイスターの認定証も。

そこで、セミナーを積極的に開催したり、自分自身もさまざまなタイトルを取ることで、その称号を意識的に前に出したりしてきました。
わたし自身は肩書きを求めているわけではありません。でも、世界でこんな賞をとりました、ここで1位です、と聞くと、その店にちょっと興味がわきませんか? そこが取り組んでいるスペシャルティってなんだろう?という興味をしかけていくために、ずっと活動し続けています。

言うことではなく、伝えることの重要さ

言うことではなく、伝えることの重要さ

――後藤さんとお話ししていると、そのお話にとても引き込まれますし、コーヒーを通じてのエンターテイナーという雰囲気が伝わってきます。

そうですか(笑)。スタッフにも常々、「言うことではなく、伝わることが重要」だと伝えています。聞き手の感情に寄り添った話し方をできるだけ心がけていきたいですね。

伝えたいものは、良いコーヒーのおいしさです。おいしくないものは絶対に売りませんし、おいしいものをおいしいと言うのは簡単です。ではその自信はどこから来るのか?と言われたら、お客さまの視点に立って品質を追い求め、嘘偽りのないことをやっているからです。少しでも後ろめたさがあると、発信力は弱くなってしまいます。
あとはどう伝えるか、伝わる話ができるか、そこをずっと勉強し続けています。

お客さまの視点

この業界は、自分の好きなコーヒーの味をみんなに伝えたい、という人が多いと思います。でも僕はコーヒー好きではなかった反面、どんなコーヒーが求められているんだろう?どうしたら喜ばれるんだろう?というところがメインで、「自分が飲みたいコーヒー」という気持ちは強くないのかもしれません。なにかを考えて、みんなで楽しいことをやりたいと思っていた学生時代と変わっていませんね(笑)。

―――とはいえ、タイトルもたくさんお持ちで名実ともに世界レベルでご活躍されています。その味覚やセンスはどのように磨かれてきたのですか?

やはり自分の基準はきちんともっていたいので、「良いもの」に対しての興味をもって、経験を積んできました。お酒も高級と言われるものをいろいろと飲んでみたり、食事も「一流かそうでないか」を意識して食べてみたり。

コーヒーも、缶コーヒーからインスタント、ファミレス、コンビニ、あらゆるものを飲みます。そこではじめて、スペシャルティの価値がわかりますし、自分の感覚の確認作業でもあります。

新しいコーヒー豆には、新しい淹れ方を広めたい

コーヒー

―――スペシャルティコーヒーがもっと身近な存在になっていくためには、なにが大切だとお考えですか?

まずは淹れ方を見直してみるのはどうでしょうか。
ドリップといってまず思い浮かぶのは、中挽きのコーヒー豆をペーパードリップでていねいに注ぐ……というスタイル。でも、30〜 40年前とあまり変わっていません。一方で、新しく生まれたスペシャルティコーヒーはコーヒー豆の硬さも、水分や脂分も従来とはまったく違い、ウェットで抽出しづらいコーヒー豆です。それなのに、これまでと同じ中挽きでお湯を注いでしまうと、酸味ばかりが立って甘さのない味わいになってしまいます。

僕のおすすめは、エスプレッソのように細かく挽いてドリップする方法です。アメリカのサードウェーブと呼ばれるコーヒーを牽引する店はみな、この方法で淹れているんです。それを日本に取り入れ、「ニューウェーブドリップ」と名前をつけました。いま、うちの店ではこの方法で提供しています。

自宅でプロの味を再現できるから、コーヒーの世界がぐんと広がる

自宅でプロの味

――数十年変わっていない、というのにハッとしました。でもやはり、コーヒーの抽出には技術が伴うものではありませんか?

そう思いますよね。ところが、ニューウェーブドリップの一番のメリットは、再現性の高さです。同じグラム数、同じ湯量で注げば誰でも同じ味、それこそ僕と同じ味も一回目から出せます。そうなると、ちょっといいコーヒー豆もチャレンジしやすくなりませんか?

みなさんが家でも同じように再現できる。その環境があって初めて、いろいろなコーヒーを楽しめるのだと思います。僕も、高級な松坂牛を家で焼いて食べようとは思わないです。おいしく焼ける自信がないですから。コーヒーも同じで、おいしく淹れられるかわからないのに、高いものを買うのは不安だと思います。

店のコーヒーをこの方法に切り替えるときは、ちょっとつらかったです。だって僕も点滴のように注いで、特別な技術で淹れた一杯に「やっぱり後藤さんのはおいしいなぁ」と言われるのがうれしかった。それなのに、誰がやっても同じになるよ、って言わなくてはいけません(笑)。

繊細なスペシャルティの香味を生かす、意外なペアリング

『SATURDAYS Chocolate(サタデーズ・チョコレート)』のチョコレート

スペシャルティコーヒーとセットになった、『SATURDAYS Chocolate(サタデーズ・チョコレート)』のチョコレート。3種のカカオの違いを楽しめる。

――スペシャルティの良さを生かす、おすすめのペアリングはありますか?

最近は、「been to bar(ビーン・トゥー・バー)」と呼ばれる、カカオ本来の香味を楽しめるチョコレートが増えてきましたが、コーヒーにもぴったりだと思います。特にカカオ82%以上の、カカオ感の強いものが合いますよ。

上生菓子

それからもうひとつ、実はコーヒーに一番合うと僕が考えているのは、上生菓子です。
ねりあんは液体に溶け出しにくいので、コーヒーがもつ香りや味わいをそのまま楽しめます。スペシャルティコーヒーの繊細な香味を残しながら、天然のほのかな甘みが口の中でほどける……これはぜひ一度試していただきたいです。
ゲイシャ種のような特別なコーヒーには上生菓子を、日常的に楽しむコーヒーならどら焼きもおすすめです。

おいしいコーヒー

――最後に、後藤さんが思う「おいしいコーヒー」とはどんなものでしょうか。

一番の基準は香りと甘さが明確にあること。それを感じやすくするために、完熟のコーヒーチェリーを収穫することに加え、精製段階でコーヒー豆の粒がきれいに揃い、ネガティブな味わいや香りが混ざっていないことが重要です。徹底して取り除き、後味がきれいなものであってはじめて、コーヒー本来の個性が出ますし、華やかな香りも酸味も甘さも感じられます。
きれいなものは、おいしい。それをぜひ味わってみてほしいです。

後藤栄二郎 Eijiro Goto
北海道札幌市中央区に本店を置く丸美珈琲店のオーナー焙煎士。「2013年度ジャパンコーヒーロースティングチャンピオンシップ」優勝、「ワールドカップテイスターズチャンピオンシップ」世界3位のタイトルを持ち、幅広いコーヒーの知識と経験を持つスペシャリストとして大会審査員や講師など各方面で活躍。
丸美珈琲店のオフィシャルサイト


写真/辻田美穂子 取材・構成・文/藤沢あかり

akatiti

514

1

この記事で紹介されたモノ

丸美珈琲店

ショコラビターセット(香ばしい芳醇な香りと苦味)

2,808円(税込)

スペシャルティコーヒーの名産出地として名高いグアテマラ ウエウエテナンゴのコーヒー。表面を焦がさずに芯までしっかりと焙煎した深煎りで、コクのあるビターチョコレートのような苦みが特徴です。ショコラビターセットは、マンデリンらしい特徴的な香りと、持ち味である複雑な味わいや重厚なボディ感を持つ、「インドネシア マンデリン アルールバダ」も含まれます。コーヒーといえば深煎り!苦味! という方にオススメのビタータイプ2種飲み比べセットです。特徴の異なる香ばしい芳醇な香りと苦味を是非比べてみては。

商品購入サイト