
抽出器具
2022年01月17日
手間と時間が特別な一杯に。サイフォンコーヒーの魅力と淹れ方
ガラスの向こう側にきらめく光の粒のような気泡と、沸き立つときのポコポコとした軽やかなリズム。揺らぐアルコールランプの炎。そして、お湯とコーヒーの粉とが混じり合う瞬間の驚きや、タイミングを見計らう少しの緊張感。
サイフォンコーヒーは、数ある抽出法のなかでも、とりわけ特別感ただようスタイルです。理科の実験器具のような道具と、加熱して膨張させた水蒸気によってお湯を押し上げ抽出するしくみは、どこかハードルが高く、喫茶店や専門店だけのものと思っていませんか?
実は、サイフォンコーヒーは家庭でも楽しめます。器具さえあればそう難しくはなく、味の再現性が高いため、安定したおいしさを抽出できるといわれています。むしろ、一度覚えてしまえば、家庭でいつでも本格的な味わいを楽しむことができるのです。
それはつまり、日常のなかで、小さいけれど確かなしあわせを自分の手で引き寄せられる、とも言い換えられそうです。
AKATITIが提案する、サイフォンコーヒーの淹れ方をご紹介します。
ここでは、HARIO(ハリオ) のサイフォンのなかでも一番スタンダードで、プロにも愛される「テクニカ」を使います。
ハリオのレシピ
1杯分 | 2杯分 | |
---|---|---|
お湯または水 | 約120ml 出来上がり 約100ml | 約240ml 出来上がり 約200ml |
コーヒー粉 ※ 中挽き | 約10g | 約20g |
こちらが基本となる標準レシピです。コーヒー粉を増やすことで、成分がより多く抽出され、コクのある味わいに。数グラム単位で調整しながら、好みの味を見つけてみてください。
今回は、2杯分を抽出します。


ランプにアルコールを注ぎ、綿芯の長さを3mm程度に調整します。


ろ過器を、上のガラスボールに入れ、下から引っ張り固定します。初めて使用するときは、ろ過布を熱湯に通し、布巾やペーパーなどで水気と取ってからの使用がおすすめです。

フラスコ(下ボール)に、2杯分の水、またはお湯を注ぎます。沸騰するまでの時間を短縮したいときはお湯を、のんびり待つ時間も楽しみたいときは水を、お好きなスタイルでどうぞ。

上ボールをセットし、コーヒーの粉を入れます。挽き方は中挽き、ザラメ糖とグラニュー糖の間くらいです(写真では、付属の計量スプーンを使っています。ちょうどすり切り一杯が10gです)。

アルコールランプに火をつけます。

コポコポと沸き始めると、一気にガラス管を通ってお湯が上がり、コーヒーの抽出がはじまります。同時に、コーヒーの香りが部屋中に広がるのを感じるはずです。

お湯が上がりきったら、スプーンやヘラなどで粉をほぐすようにかき混ぜ、そのまま約1分加熱します。

1分経ったら、すぐにアルコールランプから離し、蓋をかぶせ火を消します。

加熱をやめるとフラスコ内の気圧が下がり、押し上げられていたコーヒーが一気にフラスコ内へ下がってきます。これで抽出完了です。

さあ、熱々の一杯ができました。カップはあらかじめ温めておくと、さらにおいしく、ゆっくりと味わえます。
HARIO ミニフォン
同じくハリオでは、世界最小のサイフォン「ミニフォン」も発売されています。こちらは1〜2杯分だけ抽出ができるコンパクトサイズ。ミニチュアのようなたたずまいながら、もちろん機能は本格派。ひとり暮らしのキッチンにも置けるので、気軽に始めてみたい方にもぴったりです。
サイフォンで淹れるコーヒーは、雑味がなくクリアですっきりとした味わい。口当たりもマイルドなので、来客時や家族だんらんのひととき、みんなで楽しむシーンにもおすすめです。
一杯のコーヒーのために、じっと見守り集中する時間は、いまの暮らしのなかではとても贅沢なひとときかもしれません。目で見て、耳を澄ませ、香りを感じながら、サイフォンで特別な時間を体験してみてください。
構成・文/藤沢あかり