
インターネット上では、誰でも匿名で自由に情報を発信できます。そのため、企業や個人に被害を与える「風評被害」の事案が残念ながら発生してしまうこともあるでしょう。
実際に自分が、自社が、ネット上での風評被害や誹謗中傷にあってしまった場合にはその情報の削除ができるのか、お悩みの方もいるかもしれません。
本記事ではそのような方々へ向けて、法的な面も踏まえつつ風評被害や誹謗中傷を受けた場合にとれる手段や対策方法を解説します。

年々深刻化するインターネット上での風評被害

風評被害とは、自分や自社製品・サービスに関する根拠のない悪意のある書き込みや虚偽の情報が拡散され、個人や企業の評価や評判に悪影響を与えることです。
他人や他社を傷つける、または評判を落とす目的で悪口や根拠のない噂を言う、書き込むといった行為は誹謗中傷とも呼ばれます。
年々深刻化するインターネット上での風評被害の背景や発生する理由を解説します。
インターネット上には、以下のように時と場所を選ばず自由に思い思いの内容や意見を発信できるメディアが多岐にわたって存在しています。
・インターネットサイト
・ブログ
・X(旧Twitter)やInstagramなどのSNS
・Yahoo知恵袋やGoogleクチコミなどの口コミ投稿サイト
・YouTubeなどの動画配信サイト
非対面かつ匿名で情報を発信できることから、特定の個人や企業を攻撃する内容や、ネガティブな意見を気軽に発信してしまう人も多いと言えるでしょう。
インターネット上での風評被害により、企業や個人が深刻なダメージを受けてしまう事例も増加しています。以下に、風評被害による企業や個人への悪影響の事例をいくつか紹介します。
・営業職であるAさんがSNS上で「取引先と正規ルートではない取引をしている」と虚偽の情報を流され、上司や取引先からの信用を失い契約を打ち切られてしまった。Aさんは弁護士法人の法律事務所へ相談し、情報元の特定や損害賠償請求へ動き出している。
・食品メーカーの商品「B」が「不衛生な環境で製造されている」との根拠のない情報がECサイトの口コミで流され、商品が売れなくなり利益の損失につながった。食品メーカー側は電話やメールなどでの問い合わせ対応に追われ、事実無根であると記者会見での説明を行った。
インターネット上での風評被害がもたらす影響

インターネット上での風評被害が起きると、個人や企業へ深刻な問題が発生する原因にもなります。
風評被害によるおもな悪影響を順に解説します。
個人の場合、風評被害によって以下のような悪影響が起きる可能性があります。
・社会的評価の下落による悪影響(解雇、採用見送り、昇進機会の損失など)
・職場や学校、家庭での人間関係の崩壊
・大きなストレスや抑うつなどの精神的な健康被害
・自己肯定感の低下や無力感による社会生活への悪影響
風評被害による直接的な悪影響だけでなく、ストレスや不安感による精神的な悪影響も発生してしまうでしょう。
企業が風評被害を受けると、以下のような悪影響が発生する原因となります。
・企業やサービスに対する信用の大きな低下
・売上の減少
・株価下落
・従業員のモチベーション低下
・採用状況の悪化
風評被害により企業や製品、サービスへの評価が下がることで顧客離れが起き、売上減少や株価の下落につながる恐れがあります。
従業員もその企業で働く誇りややる気がなくなり、業務の生産性の低下や離職率の増加を招くかもしれません。求職者そのものも減少し、採用率も低下してしまいます。
風評被害に関連する、様々な権利を把握しておこう

風評被害は、様々な権利の侵害に該当することも多いです。風評被害に関連する様々な権利を解説します。
個人の場合、風評被害によって以下のような悪影響が起きる可能性があります。
・社会的評価の下落による悪影響(解雇、採用見送り、昇進機会の損失など)
・職場や学校、家庭での人間関係の崩壊
・大きなストレスや抑うつなどの精神的な健康被害
・自己肯定感の低下や無力感による社会生活への悪影響
風評被害による直接的な悪影響だけでなく、ストレスや不安感による精神的な悪影響も発生してしまうでしょう。
名誉とは、最高裁によると「人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価である名誉」と定義されています。
社会から受ける客観的評価である名誉に関する権利を「名誉権」と呼び、名誉権が侵害されることが名誉権侵害です。刑事事件の場合は「名誉毀損」と呼ばれています。
風評被害により社会的な評価が下がった場合、名誉権侵害にあたります。
名誉感情とは、人が自己自身の人格的価値に対して持つ主観的な評価であり、プライドのことです。
名誉感情を傷つける、侵害する行為は名誉感情侵害または侮辱に該当します。
風評被害により、名誉感情が社会通念上許される限度を超えて侵害されると、名誉感情侵害にあたります。
肖像権とは、最高裁によると「みだりに自分の容貌などを撮影されない、または撮影された写真をみだりに公表されない人格的利益」と定義されています。
自分の容貌の撮影や公表を容認していない、または違法と判断された場合は、肖像権侵害にあたります。
たとえば第三者の顔写真や企業の製品の写真を無断で撮影、掲載し、事実無根の情報とともにインターネット上に掲載した場合は、肖像権侵害にも該当する可能性があります。
プライバシーとは法的に明確な定義はありませんが、以下のような情報を指すことが多くなっています。
・要配慮個人情報(本人の社会的身分や人種、信条、病歴や犯罪の経歴、過去に犯罪被害にあった事実等)
・他人にみだりに知られたくない情報
・公共の利益にかかわらない事項
他人に知られたくない私生活上の事実や情報をみだりに公開されないようにするための利益や権利が、プライバシー権です。
本人が公表していない個人情報や私生活上の事項を第三者が無許可で公表した場合、プライバシー権の侵害に該当します。
たとえば個人の名前や住所、住まいの写真などを事実無根の情報や悪口とともにインターネット上で掲載した場合、風評被害とともにプライバシーの侵害に該当する可能性が高いでしょう。
風評被害に遭ってしまった場合、対象となるネット上の情報を削除依頼できる?

風評被害に遭ってしまった場合、基本的に対象となる情報の削除依頼ができます。削除依頼をする場合の正しい流れや手順を解説します。
風評被害の解決と深く関わりのある法律が、「プロバイダ責任制限法」です。プロバイダ責任制限法とは、不特定の者によって受信される電気通信(特定電気通信)上で、著作権や名誉、プライバシーなどの権利の侵害が起きた場合の規定に関する法律を指します。
出典:総務省「インターネット上の違法・有害情報に対する対応(プロバイダ責任制限法)」
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/d_syohi/ihoyugai_04.html
プロバイダ責任制限法では、以下の事項について定められています。
・プロバイダ等の損害賠償責任の制限
・発信者情報の開示請求および発信者情報開示命令事件に関する裁判手続き
インターネット上のコンテンツで風評被害が発生した場合、プロバイダ責任制限法に基づいた対処が可能です。具体的には、風評被害の発信者の特定につながる情報の開示を請求する手続である「発信者情報開示請求」などができます。ただし、風評被害のもととなる情報の削除を求められる権利については、プロバイダ責任制限法では定められていません。
プロバイダ責任制限法による情報の削除はできませんが、一般的なインターネット上のコンテンツでは、削除申請を依頼できるものも多くなっています。問い合わせ窓口などから、削除申請を依頼できます。
削除申請を行う場合、削除対象となる情報のどの部分がコンテンツやサービスの利用規約に反しているか、対応ポリシーに該当しているかを具体的に述べて依頼することが重要です。実際に削除されるかどうかはコンテンツやサービスの運営会社によりますが、一定の手続きや事実確認を経て、削除できる場合があります。
送信防止措置依頼とは、権利の侵害にあたるインターネット上の書き込みや画像、情報の送信防止措置を講じるように、プロバイダへ依頼するための手続きです。具体的には、「送信防止措置依頼書」をサイトの運営者やプロバイダ等に送付します。プロバイダ側が依頼書を受け取ると、投稿者へ意思確認を行った上で削除が検討されます。
送信防止措置依頼も、プロバイダへの削除依頼と同じく必ずしも削除されるわけではありません。削除が受けられなかった場合を踏まえて、あらかじめ弁護士へ相談実績を作っておくことも有効です。ネットトラブルに関する無料相談などのサポートを設けている弁護士事務所もありますので、利用してみましょう。
裁判所からサイト側に削除を命令してもらう、仮処分手続きを行う方法もあります。仮処分とは、通常の裁判の判決前に緊急的な暫定措置を取る手続きのことです。通常の裁判手続きよりもスピーディに削除命令を実施してもらえるメリットがあります。インターネット上で情報が拡散し、風評被害によるダメージが拡大する前に削除をすることで、被害を最小限に食い止められる可能性があります。
プロバイダへの削除依頼や、送信防止措置依頼では削除に応じられなかった場合でも、裁判所による仮処分へは対応してもらえるケースも多いでしょう。
仮処分の申立では、正当であると裁判所が判断した場合のみ削除命令が出されます。裁判所側が「権利の侵害に該当しない」「公共性があり広く知られるべき情報」などと判断した場合は削除命令は出されません。
インターネットサイト上のネガティブ情報だけでなく、「サジェスト汚染」も甚大な風評被害につながる!

風評被害につながるのは、インターネット上の悪口や根拠のない悪評といったネガティブな情報の掲載だけではありません。サジェスト汚染も風評被害につながる可能性があります。
サジェスト汚染の概要や削除依頼方法について解説します。
サジェストとは、検索時のユーザーの利便性を高めるために、検索エンジンにてキーワードの候補を自動的に表示、提案する機能です。
たとえば「飲食店」と入力すると「ランチ」「地名」「おいしい」などがサジェストとして表示されます。
サジェスト汚染とは、ネガティブな言葉ばかりがサジェストとして表示されてしまう状況のことです。
たとえば特定の飲食店名を検索入力した際に「まずい」「食中毒」「異物混入」というサジェストが自動表示されてしまったり、企業名を入力した際に「ブラック」「ぼったくり」「詐欺」などがサジェスト表示してしまったりという状況を指します。
サジェスト汚染の内容が事実無根で風評被害や誹謗中傷である場合、悪影響を防ぐためのサジェスト汚染対策が必要です。
ネガティブなサジェストの削除依頼を、検索エンジン側に申請することが可能です。
ただし、各検索エンジンとも情報の公正性を尊重する傾向にあるため、必ずしも削除依頼に対応してもらえるわけではありません。
犯罪や法律違反を誘発するような内容のサジェストは削除してもらえることも多いですが、それ以外は必ずしも対応してもらえるとは限らないことを覚えておきましょう。
風評被害につながるネガティブ情報を削除依頼する際の注意点

風評被害につながる可能性のある情報を削除依頼するときに覚えておきたい、注意点を順に解説します。
削除依頼は、状況に応じて最適な手段を選択するようにしましょう。たとえば口コミサイトで記載されている情報の削除を依頼する場合、「削除依頼フォームから受付します」など、依頼方法が指定されている場合があります。指定の方法以外で削除依頼をしても、対応されない可能性が高いでしょう。
削除依頼先や方法が分からないときには、「よくある質問」「Q&A」などのページに方法が掲載されていることがあるので、手順を確認して申請手続きを行いましょう。
サイトやSNSへ直接削除依頼をするときには、法律の知識は不要です。
ただし、送信防止措置依頼であったり、裁判所へ仮処分命令の申し立てを行う場合には、一定の法律の知識が必要になります。
正しい法務手続き方法や必要書類などの情報をしっかり調べておきましょう。
法律的な知識がない場合には、弁護士に手続きを任せることも検討しましょう。
削除依頼先のサイトやSNSによっては、削除依頼の内容がそのまま公開されることがあります。
不要な個人情報は記載しない、乱暴な表現は避けるなど文言に注意を払うといった対応を忘れないようにしましょう。
投稿者や情報発信者へ直接削除を依頼するときには注意が必要です。
たとえば企業が投稿者へメールなどで直接削除依頼をすると、「企業から圧力をかけられた」とさらなる悪評を拡散されたり、個人からSNSのDMで直接削除依頼をすると「本人が証拠隠滅をはかろうとしている」などと削除依頼文を直接SNSに投稿されてしまったりといった危険があります。
直接的な削除依頼が炎上の原因となってしまわないように、慎重に検討するようにしましょう。
削除依頼や送信防止措置依頼に応じてもらえないときには、裁判所の仮処分命令の申し立てに進みます。
裁判所の削除措置に応じない場合には、命令の履行までに一定の金銭を支払わせる方法などが取られます。
ただし、必ず情報が削除されるという確実な方法はありません。
風評被害のもとになった情報が削除されない場合には、情報の拡散を防ぐためにほかの手段をとる必要があります。
インターネットサイト上の風評被害への対策は、削除以外に「逆SEO」という手段も

コンテンツやサービスの運営側や情報発信者自身へ削除依頼を出すことはできますが、状況によっては必ずしも削除に応じてもらえるわけではありません。
また、場合によっては削除までに時間がかかる場合もあるでしょう。
風評被害への対策は、削除依頼以外に「逆SEO」を利用するという方法もあります。
逆SEOが風評被害対策に有効であるポイントを順に解説します。
逆SEOとは、検索結果の上位に表示されているネガティブな情報を含むページを、下位に押し下げるためのSEO対策です。
当該ページの検索結果を下位にすることで、悪質な書き込みなどのネガティブな情報が人目に触れる可能性を下げられるため、風評被害の拡大防止にも有効です。サジェスト汚染への対策もできます。
逆SEOはページやサイトの検索結果を下げるための施策です。
ネガティブな情報の削除依頼をサイト運営者や発信者本人に行う必要はありません。
裁判所による仮処分申し立ての場合のような、弁護士への相談・依頼や法的な知識も不要です。
情報の削除にともなう無用なトラブルや依頼費用の発生を避けつつ、風評被害への対策ができます。
逆SEOは、専門業者に依頼することでより高精度な、ページ順位の押し下げやサジェストワードの書き換えなどが実現します。逆SEOに強い専門業者を選ぶことで、風評被害対策にも有効です。
インターネット上での風評被害、不当な情報の掲載などでお困りの際には、ぜひマスターマインドへご相談ください。
まとめ
ネット風評被害に遭ったら適切な方法を慎重に検討! 逆SEOの専門業者にもぜひご相談を
風評被害がもたらす影響や削除依頼方法、対策方法について解説しました。
風評被害はインターネットの匿名性やコンテンツの多様化を背景に増加・深刻化しています。
風評被害にもし遭ってしまったら、削除依頼をはじめとした適切な対応を行いましょう。
ただし、削除依頼はかならずしも対応してもらえるわけではなく、炎上を避けるなどの慎重な検討も必要です。
逆SEOの専門業者への相談も検討し、しっかりとした風評被害対策を行いましょう。